2007/11/26 月曜日

ふたりの桃源郷

Filed under: 所長のたわごと — hyuman @ 21:42:38

 昨夜(午前零時を回っていたので実際には今日)、深夜テレビに釘付けになりました。素晴らしい番組が放送されました。

 深夜1:00~2:00くらいですね。『ふたりの桃源郷』と題されたドキュメンタリー。

 ご覧になった方はいませんか?

 あまりに感動したので、誰か見た人はいないものか?・・・と、インターネットでこの題名を入れ検索をしたら、沢山反響が出ていました。思わず『俺だけじゃないんだ』と知ったら嬉しくなりました。

 いくつも載っていましたが、端的にあらすじを上手くまとめたものがあったので、以下に引用させていただきます。

 優秀賞を受賞した山口放送制作の「ふたりの桃源郷」という50分の作品だ。

 90歳の夫と85歳の妻は、電気も電話もない山奥に暮らしている。戦後の貧しい時代に血みどろになって夫婦ふたりで切り開いた山。しかし3人の子どもを育てるために山を捨てたのだった。そして子ども達の自立を機に、再び山で暮らし始めた。番組は山奥で「生きる」老夫婦を17年間にわたって追いつづけてきた。「自分らしく老いていきたい」と願うふたり、けっして私達に教訓めいた言葉を吐くことはない。大きなドラマがあるわけでもない。しかし彼等のたんたんとしながらも真摯な生き方にくぎ付けになってしまった。番組を見終わっても「老い」と「生きる」というフレーズが淡い耳鳴りのようにいつまでも残っている。しかしなぜかそれが心地よい耳鳴りなのである。

 いかがでしょうか。そうなんです、特に何かに向けてメッセージを放ったりはしないのです。ただただ、そこに生きている。印象に残っているのは、「山に来ると・・生きている。ん・・、生きていることを実感する」という年老いたご主人の不器用な言葉でした。

 日曜日の夜ということで、早めに就寝しようと考えていたのに、本を開いたりパソコンを開いたりで夜更し気味・・。そんな時、音がないと寂しいのでONしていたテレビにその題名が映りました。

 最初は何となく、しかし次第に目を離せなくなりました。

 すごいドキュメントでした。電気もガスもない山奥で2人暮らし。映像の2人はとても仲良しで一心同体。何だかやりとりがとても滑稽で、どういうわけか体の動きも大昔の映画にあるようなコマ送りをしたような “ちょこまか” さで面白く、とても高齢の動きには見えなくて・・最初は笑いで引き込まれていきました。

 とにかく楽しそうな笑顔がいっぱい。ご主人が奥さんの髪を梳かしている姿、それをされている奥さんの嬉しそうな笑顔。

img_1652.JPG

 元々、若い頃に山を切り開き、2人は山暮らしを始めた模様です。子供にも恵まれ賑やかな生活をしていたものの、子供達の将来を考え、山を捨て街(大阪)に降りた・・しかし、子供達の自立を境に、ご主人は一大決心をし、奥さんに「これからは2人きりで山で暮らそう」と告げ、もう何十年も2人での山暮らしを続けてきたようです。

 しかし、人間は老いていくんですね。当たり前ですが。数年経つと、明らかに姿が変化していく。そして体も動かなくなってゆく。いつの間にか、この先この2人の生活はどうなっていくのだろう・・と本気で心配して画面に見入っていました。

 80歳を過ぎてもとんでもなく元気な2人でした。薪はガンガン割るし、たまに月に一回車を運転して山を降りる(年金を下ろし米を買うため)し、とにかく力強かった。娘たちがこの先を案じ街での同居を説得しようと、2人のお祝いを兼ねながら開いたパーティー上でも、ご主人は「残り僅かな命、最後は山で飾りたい」と言ってのけました。

 でもそれから数年の時が流れ、ご主人が90歳になる頃、がんや肺炎、肺気腫を患い入院してしまったのです。やがて、老人ホームに2人は居を移しました。

 無言で施設内の廊下を歩く2人。明らかに山で見せていた笑顔は失せ、映像で見ていてもみるみる弱っていくのが分かりました。

 横になっているご主人の体温の上がらない手のひらを擦りながら、「この先どうしよう、今まで何でもお爺さんにやってきてもらったから、こんなお婆さんでは何もできないよぉ。どうしよう・・」と奥さんが嘆いていました。病院の入退院で会えず、再開した時には「お爺さーん・・」と子供のように泣きじゃくる奥さんの姿が印象的でした。

 ところが、体調も安定してくると、老人ホームから許可を貰い、2人は何と頻繁に山通いを始めました。

 驚くことに山に入ると2人共とても元気になるのです。あんなに弱っていたのに不思議と体が動く、表情にもエネルギーがみなぎる・・という感じでしょうか。まるで漫画のような変化です。

 そんな老人ホームと山の行き来の生活を続け、次第に山から離れていた娘達も頻繁に顔を出しては、昔のように楽しい生活を送るようになりました。

 ご主人が92歳の頃には立ち上がるのもままならず、それでも地面を這いながら、自分に出来ることを探している姿に、何とも心を打たれました。悲しい感じではありません。「今度は米を作る」と眼をキラキラさせ、山を見つめる瞳はとにかく “生きて” いました。

 それから間もなく93歳で永眠されました。

 奥さんがどうなったか・・私はそれが気になりました。

 そう、“無事” 認知症になっていました。あれほどご主人に、ある意味すがり、必死で支えてきた人です。正気じゃいられないだろう・・と想像していました。とても受け入れられないだろうと。

 何かで読んだことがあります。神様は背負いきれない荷物は背負わせない・・と。交通事故で大きな事故をした瞬間も人間は “気絶” することでその瞬間の本当の痛みは知らない。私の精神疾患に苦しむ友達も、とんでもなく精神的に追い込まれると、まるで活動のスイッチが切られるように意識を失い、遁走(気が付くと知らない場所にいる。ある時は神奈川で気を失い、知らない間に北海道にいた)してしまう。

 少し横道に逸れましたが・・・

 そういう意味で、認知症になったことを “無事” という表現にしました。当然に死んだなんて認知できない。お爺さんは山に行っていると思っている。なかなか戻らない・・と心配している状態なんですね。

 娘さんが介助して歩いている。お爺さんはどうしたんだろう・・とお婆さんはまた言う。娘さんは、「山に行っているんじゃない?呼んでみたら?」と応えた。

 お婆さんは何度も叫んだ。「お爺さーん!お爺さーん!・・・」。甲高い、子供にも似た高い声が、山の空にこだました。何度も何度も。

 番組の最初のほうでも同じように山に向かいお爺さんを呼ぶシーンがありました。茶目っ気たっぷりに「帰ってこなかったらどうしよう」と言いながら、遠くからの返事に安心していました。

 しかし、もうあのお爺さんの返事は二度とない。

 今も耳にあのお爺さんを呼ぶ声が残っています。悲痛な叫びにも似て、でも、どこまでも果てしない、まるで人生を奏でる空に届くような声が・・・。

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 特に結論はありません。

 人間は限りなく死に向かって生きている。その過程で老いていく。当たり前のそのことを辿ることで、改めて人生を考えさせられました。

 再放送をしてほしいものです。そして多くの人に観てもらいたいと強く思います。 

コメント (3)

  1. はじめまして こんにちは。
    こうやってコメント書かせていただけていることとてもうれしいです。
    私も観たんです 桃源郷。
    あの2人を観てから 本当の愛というものを とても深く深く ビジョンとして持つことができました。
    あの 奥さんの「おじ~~ちゃぁ~~ん」と甲高い声。
    山に響きわたる声 返事のない声
    私も 最後に 奥さんが 無事認知症になっていたことで
    神様からの贈り物に違いないと思いました。
    このお話を こうやって共感できて 本当にうれしいです。
    あんな自分らしい生き方をしたいと 心からビジョンがもてました。
    それでは 失礼いたしました。

    コメント by YOKO堂 — 2007/12/5 水曜日 @ 14:41:34

  2.  こんな形で共感できるなんて、本当に嬉しいことですね。

     感謝感謝、ありがとうございます。

     なるほど・・・神様の贈り物。すごく良い表現ですね。

     私のほうからもYOKO堂さんのブログにお邪魔させていただきます!

    コメント by hyuman — 2007/12/6 木曜日 @ 21:26:31

  3. 見れませんでした!!
    ビデオセットしていたんですが、残念!!!
    ぜひビデオでもDVDでもよいので絶対購入したいです。
    お願いいたします!!!!

    コメント by 東郷 芳衣 — 2009/6/24 水曜日 @ 23:08:41

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